養蚕と新潟|錦鯉・平面繭・狛猫との意外なつながり【ぼこさま特別展レポ】 | Nonko blog

養蚕と新潟|錦鯉・平面繭・狛猫の意外なつながり【丘陵公園・ぼこさま特別展レポ】

ぼこさま特別展のポスター(2026年6月開催) 体験・レジャー

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新潟や旅先で伝統織物を見るのが好きな私。「養蚕(ようさん)」というと、どこか昔の産業というイメージがありました。

そんな中、国営越後丘陵公園で開催されていた「ぼこさま特別展」を訪れてみると、錦鯉のルーツ、平面繭という新潟独自の技術、そして狛猫まで、思いがけないところに養蚕とのつながりがあることを知りました。

さらに、カイコは今も研究が続けられている生き物であり、養蚕は決して「過去の文化」ではなかったなど、この記事では、「ぼこさま展」で教わったことを中心に、新潟と養蚕の意外なつながりを記録しています。

ぼこさま展ってなに?

越の里山館の外観

会場は「越の里山館」。国営越後丘陵公園の中にある、明治時代の養蚕農家の建物を移築して公開されている施設。

養蚕農家の古民家2階の渡り廊下

「ぼこさま」というのは、新潟の養蚕地域での蚕(カイコ)の呼び名。「お蚕様(おかいこさま)」と呼ぶ地域もあり、諸説あるようですが「ぼこ=こども」と同じくらい大切な存在として扱われていたのが、呼び名からも伝わってきます。

ぼこさま特別展のポスター

公園内への入園料(おとな450円/中学生以下-無料)と駐車料金(普通車320円)、展示は無料でした。「ぼこさま特別展」は2026年6月30日まで開催されています。

▶ 公式:国営越後丘陵公園

館内では、越後の養蚕にまつわる資料・工芸品の展示、まゆを使った工作コーナーに加えて、私が訪れた6月14日は「生きたカイコの展示日」で、カイコ先生による解説もありました。(生体展示日は6/6・6/14・6/21の3日間のみ)

カイコ先生が何度も「蚕は学術的に研究しつくされている」と言っていました。陶器で出来た蚕模型も展示されていて、とても前から研究されていたことがわかりました。

「蠶」と書かれた緑ののれん

入口にかかっていた「蚕」のれんには、silkworm/Bombyx mori L.(カイコの学名)も記されています。

錦鯉のルーツは、養蚕にあった

知らなかったこと「その1.錦鯉のルーツは、養蚕にあった」

新潟=錦鯉の発祥地、山古志村(現・長岡市)で江戸時代に生まれた、というのが定説。公式では「棚田の上の溜池で飼っていた真鯉(食用)の中に、突然変異で色のついた個体が現れた」と説明されています。

ところが、ぼこさま展で教わったのはもう一歩、踏み込んだ話。

カイコのサナギの展示

養蚕で繭をとったあと、中に残るカイコのサナギ。これを真鯉のエサとしてポイポイ与えているうちに、突然変異が起きて錦鯉になった、というつながり。タンパク質が豊富で栄養価が高く、色揚げとしていいエサなのだそうです。

(我が家にも金魚がいるので「色揚げ」という言葉にピンと来て、すんなり理解。)

自分の住んでいる県で育てられている「錦鯉」が世界的に人気の魚であることは知っていたけれど、産業だけではなくて、人々の生活の中で流れるようなストーリーがあったのが、私の中でけっこう衝撃的。

真鯉の突然変異という現象だけを切り出すと「偶然」だけど、養蚕を背景に置くと、いくつもの生産を併用してきた働きぶりや「文化の中で起きた必然」のように見えてきました。

(公式情報ではここまで明言はされていません。展示で教わった「養蚕とのつながり」という視点を紹介しています。)

▶ 参考:にいがたの錦鯉(新潟県)

新潟が特許を持っていた「平面繭」

知らなかったこと「その2.新潟県が特許を持っていた【平面繭】」

新潟独自の平面繭の現物

普通の繭は、カイコがくるんと丸まって作る楕円の形をしていますがあえて平らに作らせた繭を「平面繭(へいめんまゆ)」といいます。

平面繭は、文字どおり「板状に平らな繭」。平らな箱の中に数頭のカイコを乗せて糸を吐かせて作っています。造花などのクラフト材や書画用紙の素材として重宝されているようです。

実物を見ると、想像していたよりずっと大きくて、しっかりとした分厚い和紙のような紙でした。この平面繭の製法は新潟県が特許を持っていたので、平成の途中までは新潟独自の技術として守られていたのですが、当時の県知事の意向により産業の一線からは手を引き、手放すことになったようです。

ちゃんと特許化される領域の技術として「カイコ」を研究していたのが新潟だったなんて、地元民としてちょっと誇らしい…嬉しい。

▶ 参考:AgriKnowledge|管理に手間がかからない良質な平面繭生産

カイコは今も「研究されている生き物」

知らなかったこと「その3.カイコは今も【研究されている生き物】」

養蚕之圖(蚕の生育を描いた掛軸)

カイコは織物などの衣料で使われる素材だと思っていたので、展示で多くの用途で研究されていて、実用もしていることも新たな発見でした。

  • 遺伝子組換えカイコを使った医薬品開発
  • カイコの絹糸を使った再生医療(軟骨培養・手術用縫合糸)
  • ヒト型コラーゲンの生産

医療用の縫合糸も、衣類の繊維としてもどちらも糸。「糸」としての用途を考えると幅はまだまだ広がるんだろうなと感じました。

▶ 参考:化学と生物|遺伝子組換えカイコが開くシルク利用の最前線
▶ 参考:信州大学 塩見研究室(カイコとシルクの研究)

養蚕と猫と絵本

知らなかったこと、「その4.養蚕と猫と絵本」

平面繭の展示を見学する様子

養蚕農家にとって、一番の天敵はネズミ。白くてふにゃふにゃしている蚕はねずみからすると美味しそうなものなのだそうです。

だから養蚕地域では、ネズミ除けのために猫を飼う家が多く、「栃尾紬」の産地である栃尾の「南部神社」には繁盛を願って狛犬ならぬ狛猫が祀られているそうです。

養蚕が盛んだったから、猫が大事にされて、それが神社の信仰のかたちになって今に残っている。

猫かわいい、めずらしい、と思っていましたが、ストーリーとして「養蚕の神様」と「狛猫」のつながりが点と点でつながったのも、行ってよかったと思えた体験。(こういう豆知識が、まち歩きを楽しくさせてくれる)

絵本『八方にらみねこ』(武田英子 著/講談社)も、この養蚕と猫の関係を題材にした作品としてぼこさま展の絵本コーナーにも置いてありました。

▶ 参考:長岡市観光公式|南部神社
▶ 参考:新潟県の伝統的工芸品

子どもも楽しめた展示

正直、子どもが養蚕の特別展をどこまで楽しめるのかは行ってみるまでは未知。クラフト体験があったので、これは楽しんでもらえると思ってはいたものの、カイコ先生の解説や絵本があったことで思ったよりも長く楽しんでくれました。

繭で作ったピンクのサシェ(飾り袋)

もともとは、子どもが「学校で観察している幼虫がさなぎになったこと」を話してくれた時に見かけて、行くことにした「ぼこさま特別展」。サナギを作る時の糸が口の近くだけど、口じゃない、横から出ているんだよというのも実際に解説の中で聞くことも出来ました。

子どもも、実際に目にしたことと、知識とが結びついたみたいでした。

建物の2階には養蚕で使われていた蚕の棚や、機織りの機械、糸つむぎの道具などが展示されていました。

機織り機の展示

触りたかったようですが、グッとがまん。機織りの機械を見て「実際に動くのかなぁ」と興味を持っていました。

繭を使った工作コーナーでは、ピンクに草木染された繭で小さなサシェ(飾り袋)をひとつ作って帰ってきました。本が読めるスペースがあったのも、ポイント高い。

触れる展示があまりなかったので、どれを触ってよくてダメなのかソワソワしているようだったので、その点ではちょっと退屈だったかも。

養蚕は「過去」じゃなかった

養蚕というと、どこか「昔の産業」というイメージがありました。

でも、ぼこさま展で知ったのは、カイコは今も研究され続けている生き物だということ。そして、錦鯉や平面繭、狛猫など、新潟の文化のあちこちに養蚕の歴史が息づいていることでした。

一見すると別々に見えるものも、たどっていくと「養蚕」という一本の糸でつながっている。

そんな発見ができたからこそ、これから旅先で織物や伝統工芸、神社などに出会った時も、きっと見え方が変わる気がします。

「マイナーな展示かな」と思いながら入った「ぼこさま展」でしたが、知らなかった新潟の歴史や文化に触れることができた、思いがけず楽しい時間でした。

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